夢は五島を舞台にした本を出すこと/氷月あや
氷月あや、というペンネームで小説を書いています。得意分野は歴史語りと料理の描写。富士見L文庫より刊行中の『飯テロ 真夜中に読めない20人の美味しい物語』には、新撰組の沖田総司が好き嫌いをして町娘を困らせる短編「いけず」が収録されています。
五島出身です。父方の実家が奈留島にあり、隠れキリシタンの血を引いています。先祖がかつて隠れキリシタンだったという遠い関係ではなく、父が子どものころはその地区で儀式がおこなわれ、一家総出でそこに参加していたと聞きます。
こうして信仰を明かすからには、父方の実家も私自身もすでに隠れキリシタンではありません。世界遺産に登録された五島・九州のキリシタンの歴史は、私にとってこれほど身近に存在します。日本史の教科書に掲載された大昔の出来事などではないのです。
父は五島列島夕やけマラソンを20回以上走っており、私もその影響を受けて、走るイベントにはよく参加しています。運営スタッフやボランティアの皆さんには、いつも本当にお世話になっています。
私は両親の仕事の都合で久賀島以外の4島に居住、久賀島には長期滞在をした経験があります。五島市の三つの島と新上五島町の二つの島、どの島についても強い愛着を持っています。
一方で、五島のどの島が地元と言うことができず、自分のアイデンティティに迷い続けていました。どの島に行っても、そこに私の故郷がないという寂しさがありました。
そこで京都大学・同大学院時代には歴史学を専攻し、五島についてより深く知ろう、より広い視野を持って理解しようと試みました。五島を一構成要素とする「海の東アジア史」が私の研究テーマです。倭寇や貿易商人の軌跡を足掛かりに、中国大陸・朝鮮半島・日本列島の文献と考古資料と地図とを問わず何でも取り込んで、論文にまとめました。
そうやって、五島から離れて悩んだり足掻いたりして、自分なりの答えを見付けました。私の故郷は五島のすべての島だ。それでいいじゃないか。
2018年、KADOKAWA発の公開型小説コンペ「ウォーカーpresents 地元のイイ話コンテスト」で、五島を描いた長編小説『エボリューション・アイランズ!』が優秀賞を受賞しました。2019年1月現在、無料でお読みいただけます。
https://kakuyomu.jp/works/1177354054885662544
福江島に住む小学5年生の男の子が主人公の『EVアイランズ』には、五島が最高に輝く季節、夏休みのわくわくが詰まっています。美しい風景とおいしい食べ物。遣唐使やキリシタンの足跡をたどれば、雄大な時の流れを肌身に感じることができる。島を駆け抜ける足となるのは、全国でも珍しい電気自動車のレンタカー。五島市には海に浮かぶ風力発電所や潮流発電の実験場があって、次世代エネルギーの導入が試みられている。
私の持つ発信手段は文章、小説です。一瞬のインパクトは写真より弱いけれども、五島を深掘りしたいかたには、ぜひ文章を通じて魅力をお伝えしたい。GOTOISTとしての1年の間に、五島を舞台にした書籍を刊行できたらと考えています。
本音をもう一つ付け加えると——。
五島が舞台の本ば一番読んでもらいたか相手は、五島におる子どもたちぞ。みんなも五島んこっば知って、GOTOISTと一緒に「五島はざまん良かとこばい」っち声ば日本中に届けていこうで!
0コメント